はじめに

2026年7月22日から24日まで幕張メッセで開催された「AI World 2026 夏 東京」に、ブースでの説明を支援する役割として参加しました。
私は22日と23日の2日間、NTTデータ先端技術社の出展ブースの一角に設けられた「AI × データ分析 AI Ready化へのデータ環境整備」という展示で、来場者への説明を支援しました。

会場では、AIを活用した製品やサービス、その導入事例などが幅広く紹介されており、AIをビジネスや業務にどのように取り入れるかを知ることができる展示会でした。来場者は技術者に限らず、経営・経営企画、マーケティング・営業、経理、DX推進、情報システムなど、さまざまな立場の方が訪れていました。具体的な導入を検討している方だけでなく、AIを活用した製品やサービスについて情報収集をしている方もいらっしゃいました。

同じブース内では、私が説明を支援したAI Ready化の展示に加え、AI人材育成、セキュアなAI基盤、Private AI、AIエージェント、システム開発プロセスや知識継承へのAI活用など、幅広いテーマを紹介しました。それぞれの展示に来場者が足を止めている様子から、AIに対する関心が、人材育成やセキュリティ、具体的な業務への適用など、多様な領域に及んでいることがうかがえました。

初日には、中学生くらいに見える子どもの来場者も複数見かけました。AI人材育成の展示を見ている様子もあり、幅広い年代の方が来場していたことが印象に残っています。

来場者と直接お話しした内容や、ほかの説明員が対応している際に聞こえてきた質問からは、AIの活用方法だけでなく、その前提となるデータ環境の整備にも具体的な関心が寄せられていることを改めて確認できました。

本稿では、ブースでの説明支援を通じて確認できた企業の関心や課題をもとに、AI活用を支えるデータ環境整備についてご紹介します。

AI活用に向けたデータ環境整備

私が説明を支援した展示では、AIによるデータ活用を見据えて、企業内にあるデータを利用しやすい状態に整えていく「AI Ready化」の考え方を紹介しました。

企業内には、業務システムのデータ、文書、ログなど、さまざまなデータが存在します。これらをAIで活用するためには、必要なデータを収集・統合し、形式や表記をそろえ、データが持つ意味を整理するなど、利用目的に応じた準備が必要です。

また、単にデータを利用しやすくするだけでなく、誰がどのデータを利用できるのか、機密情報をどのように守るのかといった、セキュリティや管理方法についても検討する必要があります。

今回の展示では、データの収集や加工、管理から、分析やAI活用までを支える基盤として、Databricksを利用する内容も紹介しました。

私は展示ブースで、主にAI Ready化の基本的な考え方を伝える説明の支援を行いました。Databricksの詳細機能や技術的な内容については有識者が担当し、より専門的な説明が必要な場合には、その分野に詳しい説明員へ引き継ぎ、連携して対応しました。

来場者の関心はデータ分析の前段階にも

私が対応した方々からは、漠然と「AIを使いたい」と考えているというより、AIを実際に利用するためには何を準備し、どのように進めればよいのかを具体的に検討している様子がうかがえました。特に印象に残ったのは、データ分析そのものだけでなく、その前段階となるデータの収集・統合、標準化・構造化に関心を持つ方がいたことです。ほかの説明員の対応では、部門やシステムごとに分散したデータを現在収集しているという話もありました。 

企業内にデータが存在していても、それぞれ異なる場所や形式で管理されていると、複数のデータを組み合わせて分析したり、AIで利用したりすることが難しくなります。来場者との会話から、AIを利用する以前に、まずは社内にあるデータの所在や状態を把握し、利用できる形で収集することが、多くの企業にとって具体的な課題となっていることを改めて確認できました。

AIで何を実現するかだけでなく、そのために必要なデータがどこにあり、どのように収集し、整理するのかという段階から検討する必要があります。今回の展示会では、AI活用の前提となるデータ環境整備へのニーズを、来場者との対話を通じて改めて確認できました。

整備したデータをどのように活用するか

来場者の中には、データを整備する方法だけでなく、その後の活用方法に関心を持つ方もいました。データを収集し、形式をそろえること自体が最終的な目的ではありません。整備したデータを集計や可視化、データ分析、業務改善に利用するのか、それとも将来的なAI活用につなげるのかによって、求められるデータ整備の内容も変わります。ほかの説明員が対応している際には、「AI Ready化した後に、人間が分かりやすいデータに戻すことはできるのか」といった趣旨の質問も聞こえてきました。

AIが利用しやすい形にデータを加工しても、最終的には人が結果を確認し、業務上の判断に利用する場面があります。そのため、AIがデータを扱えることだけでなく、利用する人がデータやAIの出力を理解できることも重要です。AIにデータを渡すまでの仕組みだけでなく、そのデータやAIの出力を誰が確認し、どの業務で活用し、どのような判断につなげるのかまで設計する必要があります。

同じ「データ整備」でも目指す地点は異なる

来場者との対話を通じて、一口にデータ整備といっても、企業によって現在の状況や目指す地点が異なることを改めて確認できました。将来的なAI活用を見据え、AIが利用できる状態までデータを整えたい企業がある一方で、まずは社内にあるデータを収集・統合し、集計や可視化、分析に利用したい企業もあります。

AI活用を目指す場合は、データの形式や品質だけでなく、データが何を意味するのか、どの範囲まで利用してよいのかといった点も整理する必要があります。一方、集計や可視化、通常のデータ分析を当面の目的とする場合には、必要となるデータ整備の範囲や優先順位も異なります。そのため、すべての来場者に同じ説明をするのではなく、その方が現在どの段階にいて、何を実現しようとしているのかを確認することが重要となります。

また、セキュリティ面を重視する方もいました。データを集めて利用しやすくするほど、誰がどの情報へアクセスできるのか、機密情報をどのように守るのかといった点も重要になります。利便性と安全性の両方を考慮しながら、データ環境を整えていく必要があります。

ほかの説明員に対して、別のAI関連サービスとの違いを尋ねる質問もありました。AI関連の製品やサービスが数多くある中で、来場者は個々の機能だけでなく、自社の目的や課題に何が適しているのかを判断するための情報を求めています。

説明を支援する中で意識したこと

説明を支援する際には、来場者によってAIやデータ活用に関する知識、関心を持つ領域、実現したいことが異なる点を意識しました。

まず準備していた内容に沿ってAI Ready化の考え方をお話しし、その間の反応や質問を確認しながら、必要に応じて言葉を言い換えたり、情報を補足したりしました。同じ説明でも、来場者によって関心を示す部分や理解の仕方は異なります。また、展示ブースで一人の方に説明できる時間も限られています。そのため、相手の反応を短時間で捉え、伝える内容や表現を調整する必要があります。データ分析に関心がある方、データの収集や統合に課題を持つ方、AI関連の情報を広く集めている方など、来場者の目的はさまざまです。

AIやデータ活用に関する説明や提案では、一方的に情報を伝えるのではなく、相手の目的や現在の状況を確認し、求めている情報に合わせて内容を組み立てることが重要です。また、技術的に詳しい質問については、その分野に詳しい説明員へ引き継ぎ、連携して対応しました。説明を支援する役割においても、担当する範囲を正確に説明した上で、必要に応じて適切な有識者につなぐことが、来場者へ正確な情報を届けるために重要となります。

AIを「とても頭の良い幼稚園児」に例える

来場者へ説明する際には、専門用語をできるだけ使わず、AI Ready化の考え方を身近な表現に置き換えることを意識しました。来場者の立場や、AI・データ活用に関する知識はさまざまです。そのため、専門的な用語や仕組みをそのまま説明するのではなく、AI活用に向けたデータ環境整備の考え方をイメージしやすい形で伝えることが重要となります。

その一つとして、私はAIを「とても頭の良い幼稚園児」に例えて説明しました。

私には5歳の子どもがいます。子どもに何かを教える際、前提となる情報が不足していたり、説明が曖昧だったりすると、こちらが意図したとおりには伝わりません。理解する力があったとしても、与えられる情報が整理されていなければ、内容を正しく捉えることは難しくなります。

AIについても、どれほど性能の高い製品を利用しても、与えるデータが不足していたり、表記や定義がばらばらだったりすれば、期待する結果を得ることは難しくなります。そのため、AIを活用する前に、データの内容や意味を整理し、利用しやすい状態にする必要があります。

もちろん、AIと人間の子どもは異なります。それでも、AIの性能だけでなく、AIに渡すデータも重要であることを身近に感じてもらうための入口として、この例えを使いました。専門用語を使わないだけで、分かりやすい説明になるわけではありません。相手の知識や関心、実現したいことに応じて、伝える内容や表現を調整することが重要です。

AI活用におけるデータ環境整備の重要性

AIを業務で活用するためには、その前提となるデータ環境の整備が必要です。ただし、必要となる整備の範囲や進め方は、企業の目的や現在のデータ環境によって異なります。 AIを活用した製品やサービスが注目される一方で、実際にはデータの収集や統合、形式の整理といった段階に課題を抱えている企業があります。データが部門やシステムごとに分散していたり、表記や形式がそろっていなかったりする場合には、まずどのようなデータがどこに存在するのかを把握し、利用できる状態に整える必要があります。 また、製品やサービスを導入するだけでなく、AIにどのようなデータを渡し、その結果をどの業務で利用するのかを整理することも重要です。将来的なAI活用を見据えるのか、まずは集計や可視化、分析に利用するのかによって、優先すべき対応も変わります。 

重要なのは、一つの方法をすべての企業に当てはめることではありません。企業が現在抱えている課題と、将来データをどのように活用したいのかを明確にした上で、データの収集・統合、品質や形式の整理、セキュリティや管理方法を検討することが、AIを業務上の価値につなげるための土台となります。 今回の展示会でも、データ分析の前段階に関心を持つ方や、整備したデータの活用方法を確認したい方が見られました。AI Ready化は、AIの実利用を検討する企業にとって、具体的かつ重要な検討事項となっています。 

おわりに

今回、来場者の方々と直接対話したことで、技術や製品の情報を伝えるだけでなく、お客様の課題や目的を起点に考えることの重要性を改めて認識しました。今後は、業務で扱う技術やサービスへの理解を深めるとともに、お客様との対話から必要な情報や選択肢を整理し、適切な提案や有識者との連携につなげられるよう取り組んでいきます。

NTTデータ ニューソンは、これまで培ってきたデータ基盤構築の経験を活かし、お客様のデータ環境や活用目的を踏まえた支援に取り組んでいます。私自身もその一員として、お客様に合ったデータ活用の実現に貢献していきます。

執筆者:翁長 公香

先進ソリューション事業部 AIビジネス統括部 AI開発担当
システムエンジニアとしてAI関連の技術支援に従事。生成AIをはじめとするAI技術に関わる業務を担当している。

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