次世代モビリティプラットフォーム構想(2) ~ 新たな体験を提供するモビリティプラットフォームの未来 ~
- モビリティプラットフォーム
- 自動車
- SDV
- DX
- データ活用
- MaaS
- CASE
- コネクティッドカー
- EV
- OTA
“場”としての次世代モビリティプラットフォーム
1回目のコラムでは、自動車業界を取り巻く背景や国内外におけるモビリティプラットフォームの動向について概観しました。本コラムでは、次世代のモビリティプラットフォームの方向性について考えてみます。
近年「モノ消費」から「コト消費」へと消費者行動は大きく変化しており、自動車業界においても、ユーザーは自動車そのもの(「モノ」)だけでなく、モビリティ体験といった「コト」に価値を見出すようになっています。
このような価値観の変化に対応するために、次世代モビリティプラットフォームは、
- 提供サービスを集約し、情報を一元的に管理することで、ユーザーニーズをタイムリーに把握する
- 様々なステークホルダーが参入し、互いに協力をすることで、革新的なアイデア創出、技術革新が行われ、新たな顧客体験の提供やサービスの改善に結び付ける
といったことが継続的に行われる“場”として、進化することが求められます。
次世代モビリティプラットフォーム サービススキーム概要
次世代モビリティプラットフォームのサービススキームについて具体的に考察します。
モビリティプラットフォームに関与する主要なステークホルダーとして、1回目のコラムにて紹介したように OEM、ユーザー、サードパーティのサービス事業者が挙げられます。
OEM が実際にテレマティクスサービス*1 を提供するためには、車両情報を始めとした各種データの収集・管理を担う役割として、1社もしくは複数の TSP(Telematics Services Provider)*2 が必要です。TSP は主に車両情報の運用管理を行います。一方、サードパーティのサービス事業者は、TSP から提供される車両情報と業際データを掛け合わせ、自動車保険や車載eコマースなどのサービスを提供します。TSP はこれらのサードパーティに対して必要な情報を提供する役割も担っています。
次世代モビリティプラットフォームのサービススキームとして、各ステークホルダーが果たす役割を図示すると以下のようになります。
*1 「テレマティクスサービス」とは、自動車に通信システムを搭載することで情報サービスを提供すること。
*2 OEMのテレマティクスサービスには以下2つのパターンがある ① 関連子会社が TSP としてサービスを提供する場合 ② サードパーティのTSPがプラットフォームを運用する場合 ※②の主要な TSP には、WirelessCar、Airbiquity、Octo Telematics、Vodafoneなどが挙げられます。

ステーク ホルダー |
提供 | 受領 | 利用料 |
OEM | ・ユーザーに車両を提供 ・TSPにデータを提供 |
・ユーザーからデータ受領 ・TSPとプラットフォームを連携 |
・TSPにプラットフォーム利用料を支払い |
TSP | ・プラットフォームを提供 ・サードパーティにデータを提供 |
・OEMから顧客データを受領 | - |
ユーザー | ・OEMにデータを提供 | ・プラットフォームサービスを利用 | ・OEMに車両及びソフトウェアアップデート料を支払い ・サードパーティにサービス利用料支払い |
サード パーティ |
・ユーザーにプラットフォームを通じてサービスを提供 | ・TSPからプラットフォーム利用権及びユーザーデータを受領 | ・TSPにプラットフォーム及びデータ利用料支払い |
上記はあくまで一例であり、実際にはIT企業や Tier1 サプライヤー、販売店などが関与するようになるでしょう。
またプラットフォーム運用を担う存在として TSP を例に挙げていますが、他のステークホルダーが関与する可能性もあるでしょう。
ここで、次世代モビリティプラットフォームにおいて各ステークホルダーが果たす機能をサービスのエコシステムという観点から整理します。
OEM・TSP・サードパーティは、プラットフォームを通じてユーザーとの接点が増えることで新たなサービス創出の機会を見出し、サービス向上に役立て、プラットフォームの改善を図り、市場を活性化することができます。
また、ユーザー自身もモビリティサービスの利用経験を作り出し企業側に対して共有を行うことで、サービスの価値を創造する重要な役割を果たします。
このように、次世代モビリティプラットフォームでは、多様なステークホルダーが参加し、協力しながら価値を共創していく関係が築かれていくことが期待されます。
次世代モビリティプラットフォーム 全体像
次世代モビリティプラットフォームに必要なアーキテクチャとは
次に、次世代モビリティプラットフォームに必要なアーキテクチャについて考察します。
まずは車種、メーカー、自動車業界に関係なく、車両のデータ及び業際データを収集し一元管理するための共通のクラウド型ビッグデータ基盤が必要となります。スケーラビリティ、セキュリティ、コスト効率性を最適化するため AWS、Azure、GCP などのクラウド基盤がその候補となるでしょう。
サードパーティは、用意された API 連携基盤を活用することでユーザーニーズに合わせた多様なサービスを開発・公開することができます。例えば、車両データを活用した最適なバッテリー管理や、エコドライブによるポイントシステムを備えた車内エンタメサービスなどが考えられます。
ユーザーは、これらのサービスを一つのプラットフォーム上で利用することで、アプリやシステムを切り替える手間が減り、よりスムーズな体験が可能になります。また、利用状況等が一元管理されることで、各ユーザーにとって最適にパーソナライズされたサービスが提供されます。
OEM は、サービス利用状況やユーザーからのレビューをもとに、ユーザーにとって最適なカーメンテナンスの提案や、OTAによる車載ソフトウェアの更新等を行うことができます。
このように、各ステークホルダーが互いに付加価値を生み出し、いつでも享受できる環境を提供します。
以下に次世代モビリティプラットフォームアーキテクチャの概要を示します。

まとめ
次世代モビリティプラットフォーム実現に向けて
今後、自動車業界を取り巻く環境変化に対応し、グローバルでの競争力を維持・強化するためには、OEM を横断し、これまで直接自動車業界に関わりがなかったような企業とも協業・団結して次世代モビリティプラットフォームの推進をすることが重要です。
しかし、その実現には、さまざまな分野での協力と、それを支える高度な技術力が不可欠です。
NTTデータ ニューソンはこれまで多くの車載システム開発や関連サービス開発に取り組んできた技術力、また、公共、金融、法人など多岐にわたる分野で、豊富なシステム開発経験をもとにした知見を有しています。これらの技術力と知見は、次世代モビリティプラットフォームの開発においても大きな力となり、皆様が第一歩を踏み出す際の支えとなるでしょう。
共に未来を創り上げていきましょう。
執筆者

- 熊谷 峻
- デジタルソリューション事業部 DX統括部 インテグレーション担当 課長代理
- これまで主に BI 及び CPM 領域を中心としたデータ分析、経営管理等のシステム開発案件に従事。現在はニューソンの次世代モビリティ領域の事業拡大に向けた活動を行っている。
監修

- 鷲見 俊祐
- デジタルソリューション事業部 DX統括部 統括部長
- 様々なシステム開発業務、中国や米国での海外駐在業務などに従事した後、先進技術活用による新規ビジネス創出活動に携わる。現在は、次世代モビリティ領域事業を牽引している。